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- 作者: 村上龍
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1987/08
- メディア: 単行本
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カンブリア宮殿で村上龍さんの話を聞いているといつも、「私が聞きたいのはそこじゃないのに!」ってもどかしく思うから、本もきっと感覚が合わないだろうなと読まず嫌いしていた。なのだけど、とあるきっかけで始めて手に取ってみた。
読んでみても実際、世代のギャップで理解できない部分も多くて、ギラギラした感じの(?)小説全体の雰囲気は苦手だった。でも、内心では歯を食いしばって、それでも「楽しんでやるんだ」っていう、ある種の鋭さとでも言うのかな?すごく自分と似通ったところもあるなあ…という風にも感じた。
学生闘争もベトナム戦争も、私には「歴史」だけど、
「シュールレアリスム?」
「音楽では誰だ?」
「メシアンか」
メシアンの名前が出てきたところで、ぐぐっとわかってきたような気がした。メシアン。鳥の声の…この世の終わりのための…。ああ、その時代なんだ、って。どこまでも自己埋没的な。
あとがきで「楽しい小説」を書いたと言っているけど、その「楽しい」の裏には常に、哲学・芸術思想とか世界情勢とか、いろんなものに踏み込もうとしつつも、あまりに高くそびえる山を見上げて身動きが取れなくなるような、焦りと悲しさを感じる。
新装版のレイアウトが嫌で、わざわざ古い版を書庫から出してもらった・・・。