劇団青年座『ジョバンニの父への旅』

当日券があるか電話で確認してから行って来ました。座席番号「1ー11」。おっ最前列の一番端かな?と思ったら、「1」じゃなくてアルファベットの「I」で最後列でした。でもそんなに広い劇場じゃないし、ちょうど前が空席だったから、よく見えた。6番シードは観客が若い人ばかりだから、ぐるっとまわりを見渡すと幅広い年齢層の人がいるのがなんだか新鮮。


入ってすぐ客席から舞台を見ると、ひっそりと踏切りの信号機とベンチと、12・3・6・9の数字が入ったアンティーク時計の文字盤のような月がある。
お芝居が始まると、こうもり傘と平行線を辿るような会話の別役実の世界。(あ、そういえば電信柱がなかった。)別役実さんって不条理劇といっても無機質ではなくて、空気がとろっとしたように感じるのは私だけ?ホルマリン漬けの標本になった気分のような…。


薄暗い舞台の上でいつもぼんやり浮かぶ月が、時間を戻したり進めたりする。「ぼくは君の思い出さ!」 だって、思い『出す』と、目の前に現れちゃうんです(星の王子さまが言ってた!/笑)。それで過去の「思い出」は勝手に現在に割り込んできて話し始めちゃう。時間の流れもあてにならなくて、噛み合わない会話のどこが鍵になってくるのか、観ている最中ずっとパズルを解いてるときみたいに、なんとか辻褄を合わせようと頭がフル回転してた。全部が噛み合うと思ったらいけないんだろうけど。


これでもう、ただ幻想的で綺麗な物語として銀河鉄道を読めなくなってしまったかもしれない。カンパネルラはただ友達を「助けたくて」溺れたわけじゃない?「母さんは、ぼくのしたことを許してくれるだろうか」宮沢賢治の原作のカンパネルラが、銀河鉄道の中でびしょぬれのまま青ざめて呟くその言葉を思い出して、舞台の上空にぶら下がってたアレと重ねてみて、どきっとした。(いやあ、「アレ」にはびっくりしたな。デフォルメされてて本物っぽくないところがかえって不気味だった…。2回目ですら、びくうっ??@△@ ってなってしまったもんね。)


宮沢賢治の書いた南十字から北の十字(白鳥座)の旅は、十字架への旅に刷り変わっていた。最後の夜空に浮かんだジョバンニの父のお墓を見てなるほどと思った。カンパネルラは北の十字架へ行ってしまったけれど、ジョバンニも十字架へ旅していたんですね。(ちなみに関係ないけど、天文学的に調べると原作の銀河鉄道は、銀河系の外側から内側へ旅をしているらしいすよ!)


どこまでが別役実さんの作で、どこからが演出家さんの脚色なのかが気になります。同じ脚本で違う演出家の舞台を見比べないとわからないのかなあ。