歩いても歩いても霧の中

歩いても歩いても霧の中

歩いても歩いても霧の中

「今しかない」。まだ寒い3月初めに旅立った70歳。第一番礼所から八十八番礼所まで順繰り43日間の四国お遍路旅。様々な表情を見せる霊場、険しい道のり、寒さと空腹、宿の心配……毎日のスケジュール、歩行距離、到着時刻、各札所の見どころとともに綴る、行路の悲喜こもごも。忘れられない出逢い、駆け出したくなるほど嬉しい出来事。高校生の純朴さに驚き、行き逢った他人の身の上が気になって一睡もできず……そんな人情お遍路紀行。

「生きている」のか「生かされている」のか、私にはたいして重要でないなあと思ってしまう。年をとれば考え方も変わるかな。
地元の人のお遍路さんへのあの暖かい心使いは本当、どこからくるのだろ。十番・切幡寺の石段入り口で荷物を預かってもらい、そこからだいぶ進んでから、私らが金剛杖を持ってないのに気が付いて追いかけて来てくれた。結果的には、もともと杖は持っていなかったから忘れてきたわけではなかったのだけど、必死に走って知らせに来てくれたことに、じんわりした。
なつかしいなあ。読んでいると、きっとまた続きから歩こう!という気分になってくる。今度はもう少し長い日程をとりたい。行程中に以前に会った人とばったり再会したり、人の縁を感じられるところが、歩きお遍路の醍醐味ですね。
実はこの本、著者が11番・藤井寺で出会う夫妻が営む喫茶店でお借りしたもの。私がお遍路に行きたいのだと言ったら、ご家族みんなでもってそれは親切に教えてくれました。何も知らなかったから、とても助かった。
お遍路がもたらす縁に、ささやかだけれど加われたような気がして少し嬉しくなりました。