ノラや

ノラや (中公文庫)

ノラや (中公文庫)

ふとした縁で家で育てながら、ある日庭の繁みから消えてしまった野良猫のノラ。ついで居つきながらも病死した迷い猫のクルツ―愛猫さがしに英文広告まで作り、「ノラやお前はどこへ行ってしまったのか」と涙堰きあえず、垂死の猫に毎日来診を乞い、一喜一憂する老百輭先生の、あわれにもおかしく、情愛と機知とに満たち愉快な連作14篇。

百輭先生って頑固で、でも独特のとぼけたかんじの理屈をこねるオチャメなおじさんってイメージ。それがノラがいなくなってから、あんまり泣いてばかりいるんでびっくりした。こうゆう一面も持っていたんだ。ノラのことがあってから情を入れまいとするのに、だんだんクルツが可愛くなってきてしまうのが、なんだか愛しく感じられたのでした。